症例事例

症例・事例一覧

認知症

入居者様紹介

74歳 女性 【要介護度5】
認知症 失語症 高血圧症 脳梗塞 腸閉塞

単身者であり、独居生活。

親族は、いとこの男性一人、殆んど逢ってはおらず、平成17年5月に脳梗塞を起こして以来、言語障害となり、疎遠気味である。主の事を知る人はいない。

平成17年 春、様子がおかしいと近所の方より、生活保護係に通達あり、病院へ連れて行くも、失語症状の為、治療進まず、帰宅させられ、その後同様2度繰り返えし、3度目、救急車にて運ばれ、ようやく入院→治療となる。

生活されていた家はとても綺麗に片付けられ、身辺・生活用品・全てきちんと綺麗に生活されていた様子が伺える。

身体状況

認知症中等度、失語症あり、こちらの話しかけにある程度の理解はあるも、時々自分の事を理解してもらえない時は、自分の太ももを叩いたり、物を投げたり、泣かれたりする事がある。

左上下肢軽度の麻痺あり。

食事自己にて接取されるが、ペースも早く喉詰め注意必要。

服装に執着あり、毎日自分で選ばれる。

ADL:全介助(食事・移乗・排泄・すべて)

当施設内サービス担当者会議

平成17年5月 脳梗塞・失語症となって以来、意思疎通困難である為、何を訴えているのか?

何を望んでいるか?どうしてほしいのか?

単身者の上、情報が得られる関係者がおらず、介護上では、ゼロからの出発であるので、これまでの生活の事や、趣味、好き嫌いの食べ物等、自身の症状より、信頼関係を築きコミュニケーションの幅を広げ、過ごしやすい生活環境作りに努め、ご本人の発信している事をつかむ。

当施設に入所前の施設(病院)では、ベッド上で、抑制着を着ていて、上・下肢を拘束されて、ずっと天井を見ている寝たきり状態であり、こちらの声掛けに、反応なし、かろうじて、目が開いている状態であった。

当施設では、拘束着は着せず、本人様が選んだ服を着てもらい、上・下肢を拘束もせず、自分の意思でどんな行動をするのか、どんな言動を発するのか?

すべての様子観察から始める。

ご本人様への介護の導入としてまず、コミュニケーション(アイコンタクト)を重視し、各スタッフが少なくとも数十回以上のコミュニケーションを計る。

当施設入居の様子

寝たきり状態で、四肢の筋力低下の他、背筋力も弱く、座位困難である為、 ベッドUP30度〜40度を始める。(リハビリ・食事・おやつ時に行う)又、嚥下力も乏しく、食事(全介助)7割摂取に1時間半ほどかかる。

服装に執着があるとの情報があったので、毎日着る服はスタッフがタンスから取り出し、ご本人様に選んでいただく。(うなずきで、返事される。)

毎日の2時間おきの排泄設定以外にも、頻繁にズボンを脱ぐ行為があり、より的確に排泄のタイミングがわかるようになる。(約4週間かかる。)

1ヶ月後

ベッド上から、車イスに一部介助にて移乗し、車イス上での生活が増え、ベッド上では体動も多くなる。

返答も、うなずきから「はい、うん」「ありがとう」と小声ながら話されるようになる。

グーパー体操もできるようになり、自己にて箸が使えるようになり、食事も一部介助になる。

半年後

片手にて車イス自走で、散歩もできるようになり、花や犬を見て可愛いと表現するようになり、ベッド上での端座位保持もできるようになる。

約1年後

片手、片足にて車イスで自走できるようになり、「これはおいしい?」「これは嫌!」と返答ができ、言葉の回復が増えてき、会話等もできるようになり、つじつまが合うようなる。食事は自立にて摂取できるようになり、服は自己にて管理し、移動は車イスで自走し、排泄は一部介助まで、できる様になる。

おわりに

脳梗塞による失語症と認知症ではあるが、各スタッフが、毎日数十回以上のコミュニケーション行い、より多く関わる事で信頼関係を築けた事で、自己決定ができる穏やかな生活を取り戻した。 ご本人様の残存機能、残存認知の回復が今後も見込まれるのであろうと思われる。